先週、王子小劇場にて、劇団普通の『秘密』という舞台を観てきました。非情なほど現実を突き付けてくるので、なかなか観客の心をえぐってくる作品ですね。あらすじ(ネタばれあり)とその感想、そして現代日本の現実についてを書いてみました。


あらすじ:
由紀は、旦那と東京に住んでいたが、地方(北関東)の実家に一時的に戻ることとなった。老いた母が体調を崩し入院しているときに、老いた父が腰を痛めてしまい、世話をするためだ。頑固で少し呆け気味の父とコミュニケーションが中々うまくいかないものの、親類や近所の老夫婦なども時折、様子を見に来てくれて、何とかやっている。由紀はテレワークで本業を続けているものの、その勤務形態が許されるのはいいとこ2か月が限界であり、母が退院して少し動けるようになった頃に東京へ戻る。



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脚本としては意図的なヤマなしオチなし、向田邦子作品のような、どこにでもありうる家庭を細かく描いています。役者の演技が細かいから、退屈せずにみられるのです。
役の大半がオーバー40歳というか、地方住まいの高齢夫婦。設定上、子ども(由紀の甥など)も存在しますが、舞台上には出てきません。そして現役世代役の過半数は東京住まい。「普通」という名の劇団が公演するだけあって、この設定そのものが日本の普通の姿だよなと、思わされます。

今回、父の腰と母の病気で、老夫婦だけでの生活リスクが顕在化してしまいました。由紀と由紀の兄は、いつまでも付きっきりで世話するわけにもいかず、ヘルパーを頼もうと両親に提案しますが、両親はまだ何とかなるとこれを拒否。ただ、父は家事を母にまかせっきりだったツケで、ひとりでパンにジャムを塗る食事準備すらうまくできず、病み上がりの母はふらふら足元がおぼつかない。若者ならば、時間を経るごとに自活力は向上するでしょうが、老夫婦はこの先状況が良くなるとは思えません。弱弱しく微笑み、頼ってくる両親に、由紀は複雑な表情を浮かべるのです。結局、定期的に見に来るからねという結論になっていない結論を出し、由紀は逃げるように東京に戻ります。


・・・この芝居では、北関東だから、1日で往復できるんですよね。ちょくちょく見に来れるのですよね。私、実家が青森なので、同じシチュエーションだと、行って軽く世話して戻るだけでも1泊2日は最低でもかかります。交通費だって、1往復4万円弱。だからといって、両親を東京に引っ張ってくるという選択肢はないのですよね。高齢者は土地に縛られていますので、やむなく実家を出る場合でも地元の老人ホームが行き先になるでしょう。ちなみに、うちの両親はテレ朝の「ポツンと一軒家」という番組が好きなので、ただでさえ青森までは遠いのに、さらなる山奥に引っ越すとか言い出さないか不安です。

程度の差こそあれ、地元を出た現役世代や若者は、実家の老いた両親をどうする問題に頭を抱えることとなります。ましてや、少子化のこの時代、兄弟姉妹で力を合わせて両親を支える連携プレーには期待できません。また、男女雇用機会の平等で、女性も働かなければやっていけない時代、そして男性も相変わらず大黒柱として収入を求められる時代、介護って誰がどうしなけばならないのでしょうね。現実的には、この舞台と同じように、「ヘルパー派遣、状況が悪化したら施設・病院」なのでしょうが。一般的には、介護離職は終わりが見えない上に収入が途絶えるので悪手とは言われています。


あと、自分自身も、結局、将来どのように介護されるかと考えると、自分の両親だけを心配している場合じゃないのかもしれません。年金はさらに減っているでしょうし。仮に子ができたとしても、子に介護を依頼するのかという問題はありますね。理想的な自殺をするか、誰かを守って誇りながら散るか、美しい生物に喰われて生の循環に喜びに浸るか、美人メイドロボットにお世話されながら老衰するか、幸福な最期はないのでしょうか?