2021年1月31日は、千代田区区長選挙と千代田区区議会議員補欠選挙があります。2021年は、衆議院選挙および都議会議員選挙があり、この1月の選挙はその行方を占う意味で非常に大きな意味を持っています。そして何よりも、人口6万人前後の千代田区において、非常にドロドロとしたえぐすぎる戦況が見え隠れしており、傍から見ていても、非常に面白いです。その面白さについて解説していきたいと思います。

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【1】千代田区長選の背景
今回の選挙は千代田区区長の任期満了によって、自動的に発生する選挙です。コロナ禍だけれども、任期満了ならば仕方のないことです。前回2017年の選挙では、下記ような構図でした。

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よさの氏には当時、都議会のドンと呼ばれる内田茂都議(自民党)が、そして、自民党の勢力拡大を阻止すべく、小池ゆり子都知事率いる都民ファーストの会が、現職の石川氏を支援することでこれに対抗します。ただでさえ区長選挙は現職有利になりますが、議会の闇として叩かれていた内田氏の評判の一時的な悪化と、当時人気のあった小池都知事の支援という要素が重なり、石川氏の圧勝でした。

そんな石川区長ですが、引退を表明しております。現職がいなくなった区長選挙は、新人の躍り出るチャンスなのです。そのため、新人同士があの手この手で競り勝とうと、恐ろしい戦いが繰り広げられます。

ちなみに、何故石川区長が引退するかと言いますと、ずばりスキャンダルでございます。所有していた区内の高級住宅街にあるマンションのおよそ1億円の部屋が、一般には販売されず、土地の所有者や得意客に提供される「事業協力者住戸」と呼ばれる部屋だったことが2020年に明らかになったのです。つまり、区長という立場を利用し、業者から便宜を図ってもらっていた可能性があったのです。千代田区議会は、これを区長に厳しく追及したところ、区長は議会を解散させてやると応戦するなど、泥仕合が行われます。結局、区議会の解散は無効となったわけですが、流石にこの状況では再選は難しいと考えるのが普通でしょう。


【2】千代田区という選挙区の特徴
千代田区は、主要駅でいうと、東京、神田、秋葉原、お茶の水、飯田橋、九段下、神保町など東京圏の中心地です。オフィス街や下町、交通の要所など、エリアによってその様相は大きく異なります。そのため、住民の事情も大きく異なってくるでしょう。候補者が演説をするにしても誰にでも刺さる内容というのは特に難しいです。ただし、いずれにしても地価が高く、高所得層が多いとされています。

また、この区の住民の数はおよそ6万人、有権者は5万人ぐらいです。本当に東京?と思うほど、人口が少ないです。しかし、交通の要所となる駅には区外の人がひしめき合うため、候補者の陣営がビラ配りをする際は、区内の住民に渡すのが非常に難しいでしょう。そういった意味では、ぱっとでの新人よりも、地域に根付いて地元の人たちと地道に関係を構築してきた人が有利となります。



この地域で衆議院選挙が行われる場合、千代田区の他、港区や新宿区の一部を含む「東京1区」と呼ばれる選挙区となります。いずれの地域も所得が高い人が多い地域です。現時点でこの選挙区から当選しているのは、立憲民主党の海江田万里氏です。左派とかリベラルとか言われる立憲民主党ですが、海江田氏は経済政策にも強く、左派だけに留まらない支持を得ています。なお、東京1区の以前の当選者は自民党の山田みき氏。ここ数回の選挙では、山田氏と海江田氏が交互に当選する激しい戦いが繰り広げられています。

この最終決戦の地に、次の衆議院選では、日本維新の会から小野たいすけ氏が立候補するでしょう。2018年の参議院選や2019年の都知事選において、東京1区は維新の支持者が多いことが明らかになりました。もし、次回の衆議院選で維新が東京で2議席を獲得する場合、そのうちのひとつは小野氏だろうと言われています。維新にとっては最重要地域なのです。


【3】区長選候補者について

今回、立候補したのは、4名です。
樋口たかあき(都F推薦)
はやお恭一(自民公明推薦)
いがらし朝青(維新推薦)
宮田朋輝(無所属)

政策は、基本的にみんな保守ということで、ぱっと見似たり寄ったりです。この記事では特徴的なものだけを抜粋します。


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★樋口たかあき
都民ファーストの会推薦。
京大出身、父親は元警視総監。2017年の都議選で14,418票を獲得し、自民党の若手・中村あや氏を破り、東京都議会議員(千代田区選出)となった。千代田区の都議選の枠は1名なので、実質的に当時、千代田区の選挙でトップを取ったことになる。今回、区長選挙に立候補したため、自動的に都議を辞職することとなる。小池ゆり子氏に以前インターンをしていたほど関係の深い、純正小池チルドレンである。今回の区長選では早速、都知事からエールを送られている。20年都議補選における北区の天風氏への応援よりも今回の方が、小池氏のエールは明らかに大きい。
説明責任を果たすオープンな区政、コロナ対策は都と連携を掲げている。また区長報酬2割カットと意気込む。
主な応援者としては、都Fの他、民主党系と繋がりの深い連合東京の推薦も得られている。そして、驚くべきことにかつて都議会のドンと呼ばれ、小池氏の敵対勢力の中心人物・東京自民党の内田茂氏も関わっているとの週刊誌報道も出回っている。次回都議選で内田氏の娘婿の出馬に便宜を図るよう、小池都知事と連携しているとのことだ。かつて、内田氏の後継者として都議選に出馬し敗れた中村氏がTwitterでわざわざ言及している点は興味深く、自民党の川松都議はこの報道に憤慨している。

他地域と比較し、都民ファースト系のポスターの数が非常に多く、評判の悪い前区長の後継にも関わらず、比較的に有利に戦いを進めている。次回都議選を鑑み、絶対に負けられない戦いだ。

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★はやお恭一
自民党・公明党推薦。
西友に勤めた後、2007年以降4回の当選で、千代田区区議を続けていた。今回、区長選挙に立候補したため、自動的に区議を辞職することとなる。今回の戦いは、衆議院選自民党候補予定者山田氏とのセット選挙。千代田区は、本来保守王国であり、区議会も自民党議員の割合が高い。現在の東京1区衆議院議員は立憲の議員であるが、千代田区だけはあまり立憲の勢力が強められないエリアであり、何ならば、安部前総理は、秋葉原を衆議院選最後の演説場所に選ぶほどだ。

しかしながら、直近の自民党の支持率は以前より低下気味で、公示日の選挙ポスター張りも他陣営にやや遅れをとっている印象があり、そこまで盤石とは言えなさそうだ。それでも生まれてから地元に根付いた活動を続け、歯科医師会など各種団体からも支持を集める手堅い戦いをするだろう。

政策で独特なところは、公務員・公共事業の増強愛煙家と非喫煙者の共生であり、保守でありながらも特に維新とは大きく異なっている。また、企業でIT部門を経験したからこそ、対面の重要性を認識している。

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★いがらし朝青
維新推薦。共産党の一部が自主的に支援を表明している。なお、維新と共産は共闘をしている訳ではなく、陣営は基本的に維新であり、共産は独自で応援をしているという構図だ。元々、五十嵐氏が一人で立候補しようとしたところを、東京維新が後から支援をしようと名乗り出たのである。このリクルーティング戦法は、区長選に敗れたばかりのあたらしい党代表の音喜多氏を19年参議院選にスカウトし、20年都知事選で一人で立候補を表明した小野氏に記者会見後に速攻で駆け寄った、独特のやり方だ。小野たいすけ氏は、結果として現在、東京1区の維新の候補予定者として活動することとなり、セット選挙となる。東大出身同士で、同じ先生の下で勉強していたこともあり小野氏とは息があう

区長報酬5割カットと退職金2000万円カットを掲げる。コロナ対策ではPCR拡充といった、比較的野党支持者でも理解しやすい政策を掲げている。また、キャッシュレス決済の推進や話し合いコミュニティ作成にも力を入れたいとのこと。

維新が推薦しているとはいえ、直前まで本気で一人で戦うつもりだった模様で、お金が無かったのだろう、ポスターが雨に濡れて透けている紙質。他の候補者と比較すると支援団体の影は薄めであり、無党派層からの支持を集めて追い上げに挑戦。

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★宮田ともき
無所属。もし、当選すれば26歳、最年少の区長となる。飲食店関連会社の社員。
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画像は選挙公報より。


【4】ついでに千代田区区議補欠選挙も!
はやお恭一氏が区議を辞めて区長選に出馬することとなったため、その空席を埋める補欠選挙も同時に行われる。そして、その戦いも中々パンチが効いており、注目である。
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★大坂たかひろ
自民党公認。中小企業診断士。前回の区議選で僅差で落選。挽回のチャンスが与えられた。中小企業支援政策やバリアフリー政策などを掲げる。千代田区というぱっと出の候補者に厳しい地域で元区議として活動を続け、自民党区議の議席を譲り受けるという意味では、他の候補者よりアドバンテージは大きい。かっちりとした人からの票を積み上げると思われる。

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★梅田なつき
あたらしい党公認。一見女性だが、女装子。肉体的には男性であり、パートナー(結婚相手)は異性(女性)である。受動喫煙対策やLGBT政策、表現の自由などを掲げており、おそらく、はやお恭一区長候補の対極に位置することとなる。
あたらしい党は音喜多参議院議員が、維新に勧誘される前に立ち上げた地域政党。多様性を重んじる考え方を持つ若手議員が多いが、都知事選・都議選などでは維新と連携を組む友党である。梅田氏は方向性が固まっている国政政党に所属するより、地域色の強い小規模の政党で活動したいとの意向で維新からの推薦は受けなかった模様。

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★加陽まりの
無所属出馬とのことだが、NHKから自国民を守る党の代表・立花孝志氏の元カノであり、立花氏が個人として支援している。Youtuberかつ司法書士。
興味深いことに、本人のSNSでは立候補について言及されていなく、ポスターの写真も区議補選のためだけに撮影されたものではない。勝手な推測となるが、積極的な選挙活動をせずに、「反自民反維新層・LGBTを好まない層」に対し、N国看板を隠して立候補した場合、どれだけ票を集められるかの実験をしているのかもしれない。

その一方で立花氏は音喜多議員に失望したと表明するなど間接支援をしている。あたらしい党勢力が減退すれば、反自民票を集中させられる可能性がある。しかし、あたらしい党、N国党は都内の幾つかの区議会に1人選出されていることがあり、一定人数の会派に所属しないと政策提案ができないという問題から、共同会派を組んでいるケースもある。党としては最初から連携はしていないが、各区議会の会派内の関係はどうなるのだろうか?