衆議院が解散するのかしないのか。台風シーズン到来とともに、そのような風の噂が一段と強まっています。そんな訳で今回は、東京都北区を含む東京都第12区の衆議院選について考えてみたいと思います。

【1】そもそも衆議院は解散するの?
これまでコロナ対策で迷走し、支持率が最低クラスにまで落ちていた安倍総理でしたが、病のために辞任表明した結果、見事に支持率はうなぎ上りとなりました。客観的にみると、別にコロナ対策が急に功を奏した訳でもないのに支持率が上がるのは意味不明ですが、ここは和の国ニッポン。散りゆく美学に日本国民の半数以上が胸を打たれたに違いありません。普通に考えれば、自民党からすれば、菅内閣の期待感が高いうちに衆議院選挙をしてしまって、しばらくの間、安定した政権を維持したい訳です。冬のコロナ再来の前に、菅内閣のボロが出ないうちに、さっさと秋解散してしまいたいのです。

ところが、これに待ったをかけているのは、自民党と組んでいる公明党です。

【2】公明党の選挙について
良くも悪くも自民党の国政改革やら改憲議論がスムーズに進まないのは、公明党が与党内でなまじ踏ん張っているからです。公明党は穏健中道を掲げており、本来自民党とは政策的に相いれない政党だと言えます。

では何故自民党は、公明党と組んでいるかいうと、創価学会という集票マシーンが必要だからです。公明党の支持母体である創価学会の皆さんは、きちんと投票に行き、学会推薦候補の名前をきっちり書いてくれる最強の票田なのです。つまり議席が1つの選挙では、自民党が出馬したら公明党は出馬せず自民党を応援する、公明党が出馬したら自民党は出馬せず公明党を応援する、といった形を取ります。

そういった選挙のすみわけで、次期衆議院選の関東で、公明党が選挙区から出馬するのは東京12区(北区全域、豊島区・板橋区・足立区の一部)、神奈川6区(横浜市保土ヶ谷区、旭区)。そのどちらも、公明党の牙城とされているのに、状況が意外にも芳しくないと言われています。


【3】東京都第12区の勢力図
東京12区の中心である北区は、選挙区としては、公明党と共産党が争う地域です。支持政党が無い人から見れば、宗教団体と反日勢力の究極の選択が求めれる地域でした。そこに殴り込みをかけてきたのが、音喜多駿氏の新興勢力で、2019年の統一地方選以降、注目度の高い選挙区となっております。

第48回衆議院議員総選挙 東京都第12区(2017年)
太田昭宏(公明党) 112,597票当選
池内沙織(日本共産党) 83,544票
中村勝(議員報酬ゼロを実現する会) 21,892票

第47回衆議院議員総選挙 東京都第12区(2014年)
太田昭宏(公明党) 88,499票当選
池内沙織(日本共産党) 44,721票比例当選
青木愛(生活の党) 40,067票
田母神俊雄(次世代の党) 39,233票


この他2020年9月現在東京12区に拠点を置いている国会議員の勢力
衆議院比例東京ブロック/高木啓(自由民主党)
参議院全国比例/青木愛(国民民主党⇒新・立憲民主党)
参議院東京選挙区/音喜多駿(日本維新の会)



【4】次期衆議院選はおっさんと30代の若手たちの戦い
次期衆議院選で、出馬の可能性が高い方々は次の通りです。意外なことに4人中3人が、30代というのは中々面白い状況です。

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★岡本みつなり(公明党)
米国MBAを取得し、シティバンク、ゴールドマンサックスで勤務経験のある生粋のエリート。候補予定者4人中で唯一の非30代の55歳。比例北関東ブロックで過去3回当選しており、外務大臣政務官としての経験を積む。主な政策は国際化の推進、世界平和。
この度、北区の荒川付近に拠点を構え、公明党党代表太田昭宏氏の地盤である東京12区を引き継ぐこととなった。いわゆる落下傘候補であり、さらにキラキラの経歴が貧困層が多いとされる学会員と相性が良いかは難しいところである。よって、地元の学会員の信頼を得るのに時間がかかっている模様。もちろん学会員は、公明党候補者というだけで自分の一票を投じてくれるだろうし、自宅にポスターも張らせてはくれるだろうが、信用度によって周囲の人たちに熱心に布教してもらえるかが変わってくる。学会員の熱狂的な支持が得られれば、東京における公明党の選挙区はここだけなので、選挙期間中は東京中の学会員が応援活動で12区に押し寄せてくることだろう。
当選可能性が一番高いとされているものの、学会員の支持を固める以外にも課題は多い。前回の都議補選で、公明党は都議会で組んでいる都民ファーストの会ではなく自民党を応援した。都民ファ支持層からすれば、裏切られた形になる。また、自民党に恩を売ったことから、自民党党員の選挙協力が期待できるものの、ふわっとした自民党支持者というか一般人は別に公明党を好んでいるという訳ではない。認めてもらうための戦略として、現在「公明党の実績」をアピールしまくっている。活動としては街宣車を回している他、時折駅前で一人で演説していることがある。



★阿部司(日本維新の会)
議員経験はないが、音喜多氏の早稲田大学時代からの盟友であり、無名だった音喜多氏を選挙対策本部長として北区より都議会に押し上げた張本人である。これに加えて、シンクタンクで政策に関する実務経験を積んだ。主に掲げる政策は消費税減税、規制緩和。
東京維新には明確な支援団体が存在しないため浮遊票頼みである。「公明vs共産」の選挙に嫌気を感じている層に対して、どのように食い込んでいけるかがカギだ。前回の参議院選、都知事選・都議補選において東京維新の躍進は目覚ましいと一部では言われているものの、依然として関東における維新の議員数は少ない。しかも複数の選挙区において維新候補者が擁立されるため、維新の区議会議員などの選挙支援者が分散し、党というより候補者個人の力でボランティアをかき集める努力が必要になる。
ただ、複数の維新候補者の中でも阿部氏にアドバンテージがあるとすれば、「あたらしい党」の推薦が得られていることだ。音喜多氏が立ち上げた地域政党あたらしい党は、北区区長選、参議院選、都議補選と2年の間に3回も大型選挙をガチンコで戦い続けた異常な練度がある。荒川の川中以外どこにでも出没する機動力があり、一般人や若者をボランティアに大量に巻き込みマネジメントするところから、他党からは学園祭選挙と呼ばれている。ポスター掲示数は公明・共産に比べれば少ないが、街頭での演説数は断トツであり、どぶ板選挙となるだろう。もし東京の選挙区で維新が一議席獲得するとしたら、ここかもしれない。


★池内さおり(日本共産党)
共産党の若手のホープで、ロックなハートの持ち主。2014年選挙区では敗れはしたものの、東京比例ブロックで当選した元職である。主な政策は多様性、まち壊し計画の撤廃。レインボーをイメージカラーに据え、LGBTや女性の権利についてを重要視し、2020年の北区都議補選でアベノマスクブラ選挙ポスターを掲示したしんどうかな候補(N国・ホリ新)に激しく異を唱えた。
勢力的に共産党というか立憲民主党も含めた左派陣営は、厳しい状況に置かれている。7月の都議補選では立憲公認・共産推薦の候補である斉藤りえ氏が2位だったためだ。抜群の美貌と知名度を持った候補者が、自民・維新・都民ファの中道右派3勢力で互いを叩き合っている構図の中、それでも漁夫の利を得ることができなかったのは手痛い。北区の共産党支持勢力は、道路建設や都市開発の反対を掲げ士気を高めていたが、既に十条駅周辺の取り壊しは大分進んでおり、それでも高い士気を掲げ続けられるかは不明である。
岡本氏に次いでポスターが貼られているが、街頭活動は公明や維新よりに比べれば街頭活動のペースは控えめ。


★牛田久信(幸福実現党)
実は今回の12区候補予定者の中で一番若い。早稲田卒。安全な暮らしの実現を訴える。
幸福実現党は右派的な政策が多く、中国脅威論より特に国防力を高めたいという主張が大きい。しかし、支持母体が宗教法人幸福の科学であるため、右派的な考え方の人でも投票に躊躇してしまうことだろう。7月の都知事選では、七海ひろこ候補が途中で選挙活動を諦めてしまい、党勢として勢いが感じられない。9月時点では4人の中で、ポスター掲示数も、SNS情報発信数も、街頭活動数も一番少なく、本当に出馬するかは不明という声もある。