当ブログでも2回に渡って、お伝えしてきた女性5人の戦いとして注目を浴びてきた北区都議議員補欠選挙ですが、ある程度、結果に対する各社報道も収まってきたので、私も住民の肌感覚として総括してみたいと思います。なお、専門家の考察の中では、NHKの分析が一番よくまとまっていると思います。

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まずは、結果を記載しましょう。おおよそ、前回の記事でアップした図どおりの感じですね。

都議補選構図20200623

今回は1議席を争う戦いでしたので、当選は上位1名、やまだ氏のみになります。

1 やまだ加奈子 自由民主党(公) 52,225票
2 斉藤りえ 立憲民主党(共、社) 36,215票
3 佐藤こと 日本維新の会(あた) 33,903票
4 天風いぶき 都民ファーストの会 23,186票
5 しんどうかな ホリエモン新党(N) 6,125票


参考までに2017年の都議会議員選挙の結果はこちら、上位三名までが当選です。
1 おときた駿 都民ファーストの会 56,376票
2 大松あきら 公明党 34,501票
3 そねはじめ 日本共産党 30,374票
4 高木けい 自由民主党 29,135票
5 和田宗春 民進党 8,316票

今回の補欠選挙は2017年に都民ファで当選した音喜多氏(現在は維新の参議院議員)が辞職したことにより、生じた選挙です。今回の補欠選挙では佐藤氏(維新・音喜多氏の後継)と天風氏(都民ファ)の票の合算が丁度、2017年の音喜多氏の得票数に近しいことが分かります。東京都北区は、与党公明党と野党共産党の牙城と呼ばれることがありますが、どちらも好まず第三極を望む声が5万強はあることが考えられます。

野党に注目した場合、今回の斉藤氏(立憲公認、共産・社民支援)の得票数は、2017年のそね氏(共産)と和田氏(民進)の票の合算値に近いことが分かり、野党共闘での上限が4万弱であることが見えてきます。

ただ、与党に注目した場合、やまだ氏の票数は、2017年の大松氏(公明)と高木氏(自民)の合計より低く、本来の与党支持者の票を固めきれていなかったように考えられます。翌年2021年の都議会議員選挙本選においては、与党共闘ができず、やまだ氏からは公明票が差っ引かれます。本選において当落のボーダーラインが3万票であった場合、山田氏は今回こそ当選しましたが、翌年はかなり厳しい戦いとなるでしょう。


【1】勝利したものの、厳しい未来が待ち受けるやまだ氏・自民

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5人で1議席を争う場合、約3万票の創価学会組織票を持つ公明党を味方にした時点で、当選にリーチをかけたも同然でした。とはいえ、公明党は国政で自民とくっ付いてるものの、都議会ではこれまで都民ファとくっ付いていました。創価学会員は自民か都民ファのどちらに投票すべきなのか混乱させないようにと、「公明党はやまだ氏を推薦する」というメッセージをかなり強調していました。公明党の寝返りともいえる自民への片寄せは、次期衆議院選を見越した貸しづくりのためだと思われます。

この他、国政選挙並みの態勢で連日自民やら公明の大物議員が次々北区に押し寄せ、ロータリーに沢山の人を動員していました。これは、広島やら練馬やらの選挙買収容疑で自民の評判が悪くなったのに加え、同時に行われた都知事選で自民で誰も擁立できなかったことによる遅れを少しでも挽回したい意図があるのだと思われます。幸いなことに、元々やまだ氏の悪い噂は北区には無く、当選できました。しかし、前述のとおり、来年はかなり厳しい戦いが待っています。本来であれば、今回は6万票とっておきたいところでした。逆風の中、よく戦い抜いて勝ったというべきか、逆風の影響をもろに受けて不安分子を残したというべきか、微妙なところではあります。


【2】未来の無い野党共闘と斉藤氏・立憲
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元々、第三極・音喜多氏の支援で2015年北区区議会議員選挙でトップ当選を果たした斉藤氏でしたが、2019年に左派・立憲に転向し、参議院全国比例に出馬し落選。そして、今回も落選と2連敗となりました。右派~中道の自民・都民ファ・維新が三つ巴になっている状態で、うまくいけば左派が漁夫の利を得られる状態でもありましたし、都知事選宇都宮陣営も頻繁に北区入りして応援しました。ここで当選できなかったのは、斉藤氏本人としても野党連合としても痛かったと思われます。

北区には国民民主党の青木参議院議員の拠点がある関係で、れいわの山本太郎氏の人気も根深いです。北区の野党は共産党一強の状態の他、れいわ・国民・社民を支持する勢力もそこそこあり(このうち区議は社民1名だけ)、立憲はそこまで強い支持基盤があるとは言いづらいです。来年はこの得票数から共産党員の固定票が減ります。本来この戦いでは自民党同様に6万票欲しかったところでしたが、遥か及ばずの結果でした。もし斉藤氏が政治家を志し続けるのであれば、鞍替えして衆議院比例に出馬するなど別の構図で勝負するか、別の地域に国替えして都議選に出るか、区議会に戻るかでしょう。このまま来年も北区都議選に出ると、最悪の場合、立憲と共産の共倒れになる可能性すらあり得ます。

選挙の動きとしては、立憲の大田区候補者の決定が遅れたために出馬表明がやや出遅れ、選挙期間前のポスターはほとんど区内に張られることがありませんでした。また選挙期間中にボランティアを募集するなど、やや後手後手の印象。ただ、斉藤氏は元々知名度が高く、マスコミではひたすら「筆談ホステス」を取り上げるといった形で空中戦を最初から制しております。また私の住んでいる地域がターゲットだったのかはわかりませんが、共産系も含めると確認団体ビラが選挙期間中に3枚も自宅に投函されており、ポスティングは頑張っている印象がありました。


【3】若さで勝負し未来しかない佐藤氏・維新
維新の佐藤氏は、この体制が維持できれば、やまだ氏を支援した自・公、斉藤氏を支援した立・共のように来年は票割れになることはなく、単純な得票数だけをみれば上位当選が狙えるでしょう。ただし、あくまでも今年の体制が維持できればです。

右派支持層で維新アレルギーがある人の言い分では「維新には時々変な議員が混じっているから」というものがあります。どこの政党にも変な議員は混じっていますが、丸山氏など割と(元)維新の問題児は悪目立ちしやすく叩かれやすいという傾向があります。これから衆議院選もありますし、来年の都議本選では今年の2人だけの擁立で終わるのかは微妙なところです。場合によっては都民ファから逃げてくる人の受け皿になることもあり得ます。慌てて変な人を擁立することで党として自滅することの無いように、公認には細心の注意を払う必要があるでしょう。また、関東において、維新はとにかく人材不足。今回は、都知事選の小野陣営、大田区の松田陣営、北区の佐藤陣営の3つに分かれて戦った訳ですが、次回の都議選に沢山擁立することによって戦力が分散しすぎてしまわないようにする注意も必要でしょう。

選挙の戦い方は、最初、佐藤氏は全く無名の候補であるため、吉村大阪府知事人気にあやかり、ひたすら吉村推し、もしくは音喜多氏の後継者として、ひたすら音喜多推しという形をとっていました。ただ、本人としては彼らの顔だけに頼るのは良くないことを自覚しており、荒川と自衛隊駐屯地以外の北区内を全てを練り歩き、自転車で走り回って、ひたすらに演説しまくりました。さらにその本人を取り巻くように、自民党の川松都議曰く「音喜多ファンクラブ」の人達すなわち「大量の民間若者ボランティア+あたらしい党区議団」が、街頭演説会を盛り上げます。当初は斉藤氏、天風氏、しんどう氏ばかりがマスコミに取り上げられ、全く注目されない候補であったにも関わらず、圧倒的な活動量と物量のザ・どぶ板でもって、北区で名が知られるようになりました。この若い民間人の自発性を引き出す陣営の作り方は、他陣営からすれば「学園祭選挙」となじる一方で学ぶべきことも多いという感想も漏れ聞こえました。

しかし、名は知られても、政策の浸透にまでは至っていなかったと思われます。主な政策やキャリアは福祉がメインで、高齢者の多い北区において相性は良いのですが、経済重視のイメージが強い維新所属なので、その政策やキャリアは正しく伝える必要があったでしょう。とはいえ、北区は主要政党が全勢力を結集させた最終戦争の戦場であり、人の多いところでは至る所で演説があり、ビラを渡され続けてきた区民はすっかり疲弊しきっていました。選挙戦終盤ではもはや聞く耳がありません。もう少し選挙期間が長くても、今回の選挙だけでは政策の浸透は難しかったと思われます。北区区民の頭がクールダウンした来年に政策を丁寧に訴えることが大事になるでしょう。維新について他に課題があるとすれば、迫っている衆議院選で北区を含む東京12区において、無名の新人阿部氏が出馬します。今回、都民ファに回った票の一部が阿部氏に来るかもしれませんが、少なくとも今回の自公連立候補の得票数を上回る必要があるのです。12区は厳しい戦いが待っていそうです。


【4】党文化の改革も求められる天風氏・都民ファ
5位のしんどう氏は最初から当選を目的としていなかったので、当選を狙っていた4陣営の中では事実上最下位の天風氏。出馬も4陣営の中では最も出遅れていました。最初こそ、この北区都議補選は、都知事選で果たされなかった「小池都知事vs自民候補」の代理戦争と言われていたものの、選挙戦中盤には早くも4位に脱落しており、そのまま浮上できずに終わりました。

一部では、小池都知事がリモート選挙に専念し、北区で応援演説をしてくれないことが敗因だと言われていますが、この分析は違うのではないかと思われます。都知事は決して見捨てた訳ではなく、応援ビデオメッセージが発されていたことはニュースにもなりましたし、選挙期間中に視察と称して北区入りしたこともありました。何ならば、真偽は定かではないものの小池氏が北区の公明党関係者に票割を依頼したとの噂すらあります。この陣営は、この上なく都知事の名前を活用し、「1枚目の投票用紙は小池ゆり子、2枚目の投票用紙は天風いぶき」とセット選挙を意識した呼びかけをしていました。おそらく小池ゆり子の名前が街頭で一番叫ばれた区だったはずです。その上で、北区区民で投票に行った人の大半が1枚目の投票用紙に小池ゆり子の名を書き、2枚目には別の候補者の名前を書いたのでした。

惨敗だった理由は4点あります。1つ目は、北区にゆかりの薄いあからさまな落下傘候補であり、準備期間もほとんどなかったこと。これは文字通りですし、しょうがないことです。来年も北区で出馬するのであれば、真摯に住民の声を聴く活動を継続して、地域に馴染む努力が必要でしょう。2つ目は、候補者本人の魅力がよく分からないということです。見た目は親しみやすい感じがして良いとは思うのですが、元宝塚男役と聞くと期待したキリッとしたイメージと異なります。また、政策にしても「小池都知事との連携」を訴えるのみで、あとは強いていえば芸能文化保護ぐらい。いくつかのメディアの取材には門戸を閉じるなど、候補者本人の物申したさが伝わってこないのです。

3つ目は、都民ファーストに集客力のある政治家の応援弁士がいないこと。応援弁士がいることで、候補者の体力温存に繋がる他、集客にも繋がります。しかし、都民ファーストの会絡みで有名な人物は小池都知事ぐらいであり、他に有名人がいないのです。都議や区議はそこそこいますが、小池知事推しで他の議員を目立たせ有名にさせることをしてこなかった党文化の影響が大きいと思われます。自民や立憲のように街頭演説会で人だかりを作る印象がありませんでした。4つ目は、多くの都民ファ議員は厳しい選挙を乗り越えた経験がないためです。多くの都民ファ都議は都議1期生であり小池旋風の中、さほど苦労せずに当選を果たしました。区議についても(小池氏の膝元である)豊島区などの一部地域を除けば、区に1人か2人の擁立で票を固め、良くも悪くも手堅い戦いをしての当選です(そうなると当時の維新もN国も似たような状態でしたが)。北区で唯一の都民ファ区議、山中氏も昨年の区議選では、駅前で多数の候補者が並んでいる中、そのうちの一人としてぺこりと頭を下げる程度の印象しか私の頭には残っておりません。昨年の参議院選東京維新のように、党として厳しい戦いを勝ち抜く勝負強さが養われていません。運の要素も0ではありませんが、候補者が選挙戦後半体調を崩して討論会を欠席してしまうほどなのです。

この選挙で、小池知事への支持は都民ファーストの会への支持に結びつかないことが明らかになってしまいました。何人かは他党に移籍を試みるでしょうが、少なくとも敵対している自民は拒否するでしょうし、都民ファは引き締めについては定評がある党なので離脱そのものがしづらいかもしれません。現状に真摯になり、改善しなければ、来年はおそらく多くの都民ファ都議が落選します。


【5】勝負に負けて、宣伝は成功して、仲間が去ったしんどう氏・ホリ新
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「NHKから国民を守る党」の拡大に限界を感じて、立花氏が作り上げた政党「ホリエモン新党」。堀江氏当人は、維新の推薦する小野氏に票を入れたものの、自分の思想を広げてくれるということで新党を放置しています。そんな党から、公示直前に出馬表明したのはゆづか姫ことしんどう氏です。北区に関する造詣は皆無に近く、若さ、美貌、地頭の良さ、ネット界隈の一部での知名度でもって戦いに挑みます。結果としては、誰もが予測通りの5位。元々、党首立花氏の記者会見では「4位になれたら」という控えめな目標でしたし、しんどう氏本人は供託金ラインを超える得票数だけで祝杯レベルでした。

さて、そんなしんどう氏の話題と言えば、アベノマスクブラを着用した合法ポスターでしょう。ネットニュースでバズっただけでなく、リアルにおいての北区民は、小学生も幼児のお母さんもお年寄りも、みんな釘付けになっていました。これを見た男子高校生が私の目の前で本当に転びました。私個人としては女の戦いで女を武器にする主義主張は支持こそしないものの、充分にありだと思います。ただ、もちろん選挙管理委員会やN国関係者にはクレームの嵐。上記の写真の5番のあたりを見てください、選挙戦最終日に私が撮った写真ですが、よく見ればポスターをはがされた跡があります。(※勝手にはがすのは違法です)クレーム多発を重く見た立花氏は、ブラの部分に「NHK撃退シール」を張るように対策を取ります。そして、この実働に動いた人はN国の北区区議、みつき慎太郎氏です。選挙戦の後に、みつき氏は「北区都議補選中に起きた全ての事に心労が絶えない」との理由で離党届を出しました。通常は離党者に厳しい立花氏ですが、流石にみつき氏に謝罪をし、届を受理したとのこと。北区のN国議員は消えましたが、3年後の北区区議選には北区在住の衆議院選候補予定者・末永ゆかり氏を擁立する模様です。

一方で、しんどう氏本人は千葉・印西市長選に出馬し、当初の予定通りであれば後に、衆議院、江東区区議に立候補予定。広報目的および国会比例票の創出が目的とはいえ、仲間のプライドをへし折りながらのし上がっていき、そしてそんな人に6000票も入れてしまう人たちの良識を疑わざるを得ません。



そして末筆ながら、「自公が都知事選に公認候補を出さず、小池氏が前回よりも投票数を上げた」ということを正しく予測できずにすみませんでした。