時カケ・サマーウォーズでおなじみ細田守監督の映画『未来のミライ』を観に行ってきました。

ここで突然ですが、この映画を観ている最中に『火垂るの墓』を思い出しました。近年は少なくなりましたが、よく夏ごろに放送していた戦争アニメ映画ですね。戦災孤児になった兄妹が、知人の家に身を寄せたものの、徐々に厄介者扱いされて、子どもならでは意地を張り続けた結果に家を出ていくことになり、野垂れ死ぬ。これ、観る年齢によって、評価が全く分れると言われています。子どもの視点で観ると、主人公の兄の気持ちと同化し、知人のおばさんが鬼婆で理不尽の塊に見えるでしょう。少し周りが見えるようになった青年期以降に観ると、ただ居候して遊び暮らしている兄妹たちに苛立ちの感覚を覚える筈です。そして、さらに大人になってから観ると、兄妹とおばさん、どちらが悪いというよりも、戦争の不条理さに言いしれぬ悲しさを覚えるといった感じになります。



話しは『未来のミライ』に戻しますが、この映画は観る人の年齢やライフステージによって、感想が異なる気がします。

簡単にあらすじを書くとすれば、主人公4歳男児のくんちゃんに、妹ができたところから話は始まります。妹の登場で、両親の愛を独占できなくなり、理不尽に当たり散らしていると、いつの間にか見知らぬ人が現れたりするようになります。その人達は、女子中学生に成長した妹だったり、若かりし姿のひい爺ちゃんだったり、何かと家族と関りがある人達です。また、いつの間にか不思議な世界(その人物にゆかりのある場所・時代)にも飛ばされるようにもなります。そういったタイムスリップというか白昼夢での出会いによって、少しずつくんちゃんが大人になっていく様子が描かれています。 

基本的にヤマナシ・オチナシ・タネアカシなしの構成ですので、『サマーウォーズ』みたいな清涼感はありませんし、『君の名は』みたいにブームになる程のインパクトもないでしょう。ただ、子どもの物事をわきまえない理不尽さというか、特有の思考回路はしっかりと描かれており、子どもの観客からの視点と大人の観客からの視点では、全く違った印象を与える作品ではあると思われます。

おそらくは、結婚を控えたカップルとか若夫婦向けの作品といった内容であり、子育てって大変だけど、悪く無いかもと思わせるような感じではあります。正直なところ、タイムトラベルものといえば、『時をかける少女』と比較してしまうのですが、エンターテイメントとしては、10~40歳ぐらいの感性からすれば、どうしても時カケの方に軍配が上がるでしょう。来年の今頃、既存の細田守監督作品を何か1本観ろと言われれば、私は時カケを選びます。ただ、自分が年をとって、恋とか青春とかを観るのがつらいという場合は、家族の愛と歴史の物語として、『未来のミライ』の方を観たくなるかもしれません。


小説が文学史に残るには、時の風化、時の試練に耐えることが必要です。その瞬間だけ一世風靡されても、ハリーポッター級じゃないと、大量のコンテンツ量産時代において、簡単には文学史に残らない。戦争の無い時代の火垂るの墓として、芸術史に残るのは、案外こういう作品なのかもしれないです。


ちなみに未来?の東京駅の描写、結構ゾクゾクしました~。