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「春売りまーす、春お買いなされー」
10年以上前にNHKの時代物ラジオドラマで、遊女がそんな感じで客引きしているのが、未だ耳に残っています。さて、本日3月3日に、吉原で耽美なイベントが行われるとのことで、行って参りました。吉原というのは、現在の東京都台東区千束四丁目にあたる、江戸時代ごろ遊郭があった花街です。現在もその名残としてソープランドの店が立ち並んでおります。

さて、そのイベントとは、「花街饗宴ロウドクシャ 谷崎色雛宴席 ー「刺青」と鮨ー文学で祝う桃の節句ー」と題した、要するに、谷崎潤一郎の小説の朗読会です。脚に発情したり、少女の言いなりになったりと、谷崎潤一郎の小説は、マゾヒズムだとか耽美主義とか言われております。

ただ、この会合で興味深かったのは、集まった男女比が女性がやや多く、和装洋装と総じて上品な服を着た人が多く集まったということ。また、「白い肌が・・・」とか性的表現が朗々と読まれている訳ですが、全然下品な雰囲気にならないのです。

エロチシズムというのは、結果論から端的にまとめれば、性的な肉体の交わりです。それそのものには、下品と感じる人こそいるとはいえ、上品も何も無いでしょう。ただ、少なくとも、会場内は下品ではありませんでした。この理由を考えてみたところ、次の3点にまとまりそうです。


1.谷崎潤一郎作品のマジック

谷崎潤一郎の小説は、出版当時は、あくまでも人気小説に過ぎなかった訳です。しかし、時の風化を耐えきり、今では、文系の大学受験を志す人であれば文学史の教科書で、彼の名を見ることでしょう。内容は官能的ではあれど、権威のお墨付きにより、芸術作品と胸を張っていえる部類のものとなりました。エロスとはある種の背徳感があるものもありますが、権威のお墨付きとあっては、背徳感は抹消されることでしょう。

2.イベント運営によるマジック

このイベントが下品な方向にいかないようにするために、幾つかポイントがありました。
まず、会場選び。今回は回らないお寿司屋さんの座敷でした。粋とか通とか、そういった言葉がよぎるような場所でもあり、本当の良さを分かる人には分かるみたいな、そういった思考の方向へ誘うこととなります。また、「桃の節句に似合った素敵な御召し物(洋装、和装を問いません)でご来場いただきました方は、500円返金させて頂きます。」と正装割引を設けることで、少なくとも来場者はけだるい格好で来ようとはしなくなるでしょう。下品なエロスは、けだるさや緩みの中に発生しやすいのですが、運営によって打ち消すことに成功していました。

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3.吉原のマジック

今回の会場の地域名について、「台東区千束」というより「吉原」という名称を強くアピールされた告知をしていました。ソープランドが林立している街というより、かつて遊女(高級娼婦)たちが生きていた街と考える方が、味わい深いものがあります。

また、遊郭の遊女というのは、下積みをして教養や品位を磨いてきた、一流芸能人みたいな存在でした。一般的な春画は、地女(一般女性)がメインにして描かれており、遊女は意外とメインにならないばかりか、豪華は服を着ること(つまり真っ裸ではない)で地女と差別化されています。地女と比較するとエロスとは少しばかり遠い存在だったといえるでしょう。

地女と遊女についての考察:「女というものかくありき」は時代と共に変化する


という訳で、桃の節句の昼間、吉原を健全に味わったのでした。

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