「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉があります。2年半に渡るフリーランス生活に幕を閉じ、就職してしまいました。幸い借金は全くないのですが、この状況、負けと言えば負けでございます。ここらへんできちんと、リフレクションをしつつ、読者の誰かにこの教訓を引き継いでもらえれば幸いです。なお、本記事は会社創業というよりも個人事業主向けの内容ですのであしからず。


 NickKing

【1】誰からの助言を聞くべきか

独立をするにあたり、色々な人の助言を頂きました。そして、参考にしていい人と参考にしてはいけない人というのがありました。まず、参考にしていい人というのは、次の通りです。

・自分がやろうとしているサービスと近いサービスにお金を払った経験のある人。
・利害関係が一切ない、元業界関係者。
・事業パートナー

逆に参考にしてはいけない人というのは、上記3つのどれにも当てはまらない人全部です。善意でアドバイスをしてくれる人もいたのですが、ディティールに対する想像力が不足しており、そのディティールこそが勝敗の分け目だったように思います。

また、業界関係者についても、利害関係はなく、また今後もタイアップの可能性が無い人からでなければなりません。ビジネスの世界は食うか食われるかの世界です。例えば、占い業界だと、占い師に「貴方は占いの才能がある」とおだてられる人もいますが、要約すれば「弟子になってレッスン料を払ってくれ」という意味の場合だってあります。

あと、一緒に仕事をする人の意見は重要です。ただ、お金に絡むだけあり、これについては多少注意は必要で、相手には相手なりの思惑があるのですよ。どこまで信頼するかは、人格、能力、実績、意欲などを総合的に加味しないと何とも言えませんが、一緒に仕事をしない人の意見に比べると、発言内容に責任や真剣味が籠っていることでしょう。


【2】軍資金は3~6か月分の生活費+最低100万円

個人事業主ということを前提にして、銀行やベンチャーキャピタルからお金を借りづらいという前提で話を進めましょうか。

よく言われているのは、「最低3~6か月分の生活費を確保すべし」ということでしょう。大抵の場合、開業直後からお金が入ってくるのは稀です。特に、法人を相手取ったビジネスの場合、月末締めの翌月払いとか珍しくない訳で、開業直後から首尾よくビジネスが進んでも入金まで2~3か月のタイムラグがあります。もし、開業後1~2か月ぐらい仕事がみつからず、ようやく受けた仕事も、制作やら準備に1か月かかり、支払いまでの期間を考えると、半年ぐらい入金が無い可能性すらあるのですよ。あと、生活費という書き方をしていますが、商売道具の購入もどこかで捻出する訳ですので、ギリギリの貧乏生活分の生活費と見積もってはいけませんよ。

あと、できればですが、100万円ぐらい生活費とは別に持っていた方が良いです。人間、お金が無いと精神的な余裕がなくなり、碌な結果を生みません。安易な怪しいビジネスの誘惑に負けそうになります。追い詰められてネガティブオーラを放っていると、お客さん候補から怖がられ逃げられます。たとえ小さな出費の失敗であっても、生きているだけで発生するお金、つまり生存費(家賃、社会保険料、光熱通信費、最低限の食費)を無駄にすることとなるため、恐怖心からチャレンジできなくなります。

貧乏生活から這い上がる美談は巷でよく語られますが、貧乏というのはやはり辛いです。例えば、風邪をひいているときって辛いですよね。あんな感じの辛さを財布が常に患っていると思えば、イメージしやすいかもしれません。追い詰められたら強い人も確かにいますが、自分は風邪をひいた状態で150%のパフォーマンスを発揮できるか考えてみれば良いかと思います。

私、独立1年目、あまりにも精神が不安定だったため、親に頭を下げて100万円借りました。あくまでも最終手段として、手を付けるつもりは無く、結局手を付けなかったのですが、100万円があるというただそれだけで、気持ちが全然違いました。


【3】開業前の人脈はアテにしない方が良い

SNSに独立しましたと投稿すると、いいねとか賞賛のコメントが並びます。でも、それをアテにしてはいけません。「応援している」というコメントも結構頂いたのですが、大体はそのコメント止まりです。

私に限っていえば、大変ありがたいことに、コメントを書いた半分ぐらいの人はお金を払ってサービスを受けて下さいましたし、そのうちの何人かは別の友達を紹介してくれたこともありました。でも、それはかなり恵まれていた方ではないかと思います。

私の他にも独立した人は何人かいますが、友達が定額を払ってサービスを受けてくれたという話は滅多に聞きません。結論を言うならば、よほどお金を払ってくれると信用できる強いパイプが無い限りは、原則的に新規開拓をしなければならないということです。


【4】お金を払わない人は信頼してはいけない

私が大失敗したことのひとつは、というか私の廃業の一番の原因は、お金を支払わない相手にかなりの時間を費やしてしまったことです。ビジネスとして夢を雄大に語るビックマウスぶりに乗せられ協賛したものの、報酬は後にしてくれ、または無しにしてくれと言われ、びた一文も利益にならないことが何度もありました。交通費と生存費の無駄でした。「いや、でもそういう活動をして沢山のいい出会いはあったでしょ?」という意見もあるかもしれませんが、そういう環境に集まってくる人は取引の相手にはなりえませんでした。タロットでも碌なカードが出ず、ダメだと分かっていたのに、情けで付き合ってしまったからなぁ・・・。夢を語る人ではなく、お金の支払いに責任を持って対応する人を信頼してください。

ちなみに最初からボランティアとして割り切っているというのであれば、話は別ですよ。


【5】新規参入者の思い付きは、大抵、古参が考えつくしたもの

お恥ずかしい話ですが正直なところ、私は独立当時、業界の穴場だと思われるポイント(ブルーオーシャン)を突けば、案外うまくいくかもしれないと薄ぼんやり思っていました。しかし、魚のいない海は酸素が無いから、魚が生きていけず、青く美しい海を保つのです。ブルーオーシャンには競合がいない理由がそれなりにあるのですよ。

新参者が思いつくようなことは、先駆者が一度は頭の片隅に引っ掛けたこと。新参者は「何故、ここに先駆者たちが居座らないのか?」を冷静に考え、適切な対策を打つことでようやく価値を創造できるのです。ただ、実際にその海に船出しないと、分からないことも多々あるわけなので、どこまで熟慮してどこまでテストとして動いてみるかのバランスも大事だったりします。個人事業主の場合は、店舗とか大幅な改装が必要な事業は例外ですが、大抵はやる前からのオリジナリティに固執せず、始めた後から微調整して形作るのが正解でしょう。


【6】どこまで見栄を張るかの問題

困窮した時期があり、その時に飲み会のお誘いがあったのですが、「お金が無いから」と断ったことがあります。それ以降、その人からはお誘いが来なくなりました。予定が無くとも先約があるからという理由で断るべきだったと今でも後悔しています。

見栄を張るというのは重要なことです。よく、ネットワークビジネスのお偉いさんや情報商材を扱っている人、開運ビジネスをやっている人が豪勢な生活をSNSやブログに書いていますが、そういう人たちがみすぼらしかったら話を聞いてみたいとは思わないでしょう。一般的な個人事業主でいえば、講師、士業、コンサルタントなんかは、依頼者からの尊敬が必要な訳ですので、みすぼらしい雰囲気を出してはいけません。

また、ヒューマンスキルや金稼ぎでは無く、技術やクリエイティビティで勝負している人にも多少はったりは必要です。そうしないと、いつまでたっても「自分が今できること」しか仕事が回ってきません。つまりは、自分のスキルアップに繋がらないのです。今できることのアウトプットばかりして、先が続かなくなります。世の中のできる人とのスキルの差がますます開きます。現状維持って、長期的な視点からすると衰退の一部ですよ。

だからといって、オーバースペックな仕事を引き受けてぽっしゃったり、過剰に自分の成功度合いを演出しすぎて出費に苦しんだりするのも考え物ですけどもね。


【7】どこまで撤退を想定すべきか

残念ながら、起業1年で廃業する人は3~4割と言われています。10年存続できるのはよほどの稀有なケースです。確率論からいえば、大体失敗するでしょう。

廃業することにおける問題は3点。
・お金、時間、信頼を失うこと。
・廃業したからといって、被雇用者への転身は楽ではないこと。
・エゴサーチすると、かつての自分の行動痕跡がWEBのどこかに残ること。

失うものについては想像に難くないでしょう。問題なのは転職で、廃業するということは、何かしら事業が継続できない事情を抱えたということで、実質的に失敗扱いです。企業からすると、活きの良い人材を雇いたい訳で、失敗者を雇うのは抵抗があります。あと、WEBに行動の痕跡が残るので、日頃から恥じない行動を心がけるべきでしょう。

だからといって、失敗することを前提に起業するのは間違っています。失敗を怖がるようであれば、そもそも起業向きではないのですよ。



という訳で、これを読んだ起業家は、私の二の舞を踏んではいけませんよ。そして、私も反省して、次のステップに行かなければな。