ひょんなことから、2016年都知事選にて、開票立会人というものをやらせていただきました。開票する際に、ルール上必ず何名か開票立会人が必要です。開票立会人とは、候補者(政党)が指名した人物で、開票時に不正が無いか目を光らせたり、おかしな投票用紙について意見を言ったりすることができます。

おかしな投票用紙「疑問票」について分かりやすく言えば、「小池ユリエ」と書かれた投票用紙があったとして、これは「小池ゆり子」氏について書かれているのか否か、意見を訴えることができます。

立会中は、撮影・録音は禁止されていますが、ブログに書いて発表しちゃダメとは言われていないので、その立会体験をまとめてみます。 ちなみに私のような開票立会人は認められていないですが、一般見学者は、何故か写真撮影はOKとのことです。

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【1】開票立会人に任命される

「開票立会人とは、候補者(政党)が指名した人物」と先ほど書きましたが、要するにその候補者の陣営の代理人です。開票立会人になりたい人は、身内か知人の範囲に、候補者本人か、陣営内の人事権限を持っている人がいることが最低限の条件になります。話を聞くと、他の立会人もそんな感じでした。立会人、経験者も初参加も入り混じっています。

投票日が近付いたある日、前触れもなく、知人の政治家から「開票立会人やってくれない?」と連絡がきました。二つ返事でOKし、「開票立会人届け出書」というのにサインして役所に提出すると、特に不備も無いようで、あっさり受理されました。

結果的にいえば、私も今回の都知事選で某有力候補の陣営に組み込まれた形になったのだと思います。まあ、開票立会人の話が無くとも、その人に投票はしていたのでOKです。特に今回のように突発的な選挙は、どの陣営も人手不足になりがちです。別に陣営に組み込まれたからといって、選挙演説を手伝ったり、ビラ配りしたりということは全くしておらず、あくまでも開票立会人だけをしたという感じになりました。

【2】開票立会人打合せ会

文字通りの打ち合わせ会です。基本的にそれぞれの地区の選挙管理委員会ごとに行われ、今回の私が関わる地区は、選挙2日前に行われました。役所の方が作ってくれた資料を粛々と読み合わせ、挨拶し、不明点があれば質問できるといった簡易的な会合です。打合せ会について、立会人は参加が必須という訳ではなく、参加できなかった人には、関係資料が郵送されます。

とはいえ平日の午後という突然告知された日程に、参加できなかった立会人も少なからず。人手不足という事情も分からないことはないですが、他陣営は大丈夫なのかと思いました。

【3】開票当日の集合

20時に投票が終了すると、各地の投票所から投票箱が次々開票所に送られてきます。21時に開票スタートです。20時には当確報道もあるのですが、その時点では1票も開票されていません。あの当確報道は、各報道機関が独自の出口調査で予測したものを、投票終了の20時に解禁したということになります。

開票立会人は公のお仕事に分類されるため、選挙管理委員会から所得税が引かれた報酬を集合時に現金でもらうことができます。その代り、病気等正当な理由が無ければ、一度受理された立会人を辞退することはできません。

地区にもよるのでしょうが、立会人は20時半に開票所に集合します。そして21時の開票まで、ジャケットなしのビジネスカジュアルな服装をしている立会人達が控室で、時間が来るのを待ちます。対立している陣営の代理人たちが一箇所に集められている構図であり、さらに今回は既に当確報道が出ているので、少々気まずい雰囲気です。対立陣営と一緒に居ても穏やかにしていられるのが、人間性として求められるのでしょう。

【4】開票直前の確認

立会人は開票直前に、開票の仕組みについて選挙管理委員会から説明を受け、委員会の付き添い有の状態で、開票所を見て回ります。これについて、開票箱に鍵がかかっていることを確認してほしいという意図があります。ただ、鍵は投票箱の上側についており、さらに投票箱は机の上にあるため、背の低い人には見えづらいかもしれません。

【5】開票作業の見学

21時になり、委員会からの開始宣言がされると、いよいよ開票が始まります。数レーンあり、流れ作業です。人力で投票用紙をそろえて、機械に入れます。大部分がこの機械によって文字で読み取られ、自動で仕分けされます。この機械は最新のものだと600万円するそうですが、予算の関係上、一度に全部最新にはできず、新旧の機械が入り混じった状態です。次に仕分けされた投票用紙を数えるチームがあり、さらに機械で100枚ずつにまとめます。100枚束を5つ結束させて、500枚の束にしたものに検印が押されていきます。開票作業のアルバイトさんたち、半袖でラフな格好をしているのですが、会場内にエアコンはなく、暑そうです。

この作業について、立会人は間近で見学することはできず、扇風機のある特設の席で数メートル先から見守っていることになります。内心この待遇の良さにお客様扱いだと感じましたが、実際お客様扱いであり、さらには丁寧に扱うことで、立会人の不正防止も含めて開票作業に過干渉したくならないように配慮しているのもあるのでしょう。それと同時に、アルバイトさんたちは半袖になっていることで、変な行動を起こすことはできませんし、扇風機なんか使って投票用紙が風で飛んでしまうのを防ぐこともできます。空調ひとつとっても、色々考えられていますね。

ただ、あの特設席、会場の端の方の作業が見づらいのが難点ではありました。もう少し特設席を高い位置に変えれば多少会場全体を見やすくなりますが、結局、距離もあるので、見えづらいものは見えづらいです。少なくとも、特設席から近くよく見える範囲では、おかしな動きはありませんでした。逆に、あれだけ大量の紙が山積みの状態にも関わらず、投票用紙が一枚も作業台から落ちていないように見受けられ、凄いとさえ思いました。

【6】30分毎の検印

特設席の前には、空のトレイが並べられています。大きさやメーカーは違うと思いますが、こんな感じのトレイです↓



ここに作業30分ごとに、500枚ずつの束になった投票用紙が並べられていくのです。1つのトレイにつき、1万票ずつ収納できます。このトレイの幾つかには、仕切りがあります。仕切りごとに、候補者の名前の札が張られてあります。「増田寛也」氏の票は、増田氏の札があるところに並べられていきます。どの情報を基にしているのかは分かりませんが、有力候補者にはトレイ1つがまるまるあてがわれている状態である一方、非有力の候補者の場合、そのトレイが3つに仕切られ、3候補者分の投票用紙がトレイ1つに乗せられていきます。この光景を初めて見た非有力候補者の立会人は唸ってはいましたが、これによって開票に不正が出るわけでは無いし、予測以上に票が集まれば仕切りをずらすと済む話ですので、スルーすべきことなのでしょうな。

さて、この並べられた投票用紙をランダムピックアップして、中身に相違がないか確認するのが立会人の役目です。パラパラめくってみての印象。

・印象に残ったのは「鳥越俊太郎」氏の「越」の字。人の目で見れば許容範囲ながらもバランスが悪く書かれているものがありましたが、それでも機械はOKと読み取っていました。

・漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字は有効票です。印象として、「小池百合子」氏の場合、「小池ゆり子」と書かれているなど、ひらがなを織り交ぜて書かれている票が多かったです。

・最初の30分ではトータル15000票の集計が出ましたが、次の30分では一気にそれが4倍、さらに次の30分では一気に9割の投票用紙が並べられました。

確認が終わると、指定の用紙に立会人が判を押します。この作業を繰り返します。


【7】疑問票、無効票の確認

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機械で判別できなかった投票用紙は、人力で仕分けをします。特定の候補者に対し有効票と思われるものと、特定の候補者に対して無効票に思われるもの、その他明らかな無効票などに分別するのです。これを立会人と選挙管理委員会の人が確認し、承認印を押していきます。概ね最初の仕分けでままで承認されることでしょう。

この記事の冒頭に書いた「小池ユリエ」ともし書かれた票があった場合どうなるか?という問題。私は実際に「小池ユリエ」票を見ませんでしたが、例えば「とりごえ」ではなく「とりこえ」と書いてある票を見ました。この場合、良識的に考えれば、流石に「鳥越俊太郎」氏以外を指している可能性は低いだろうということで、満場一致で有効票扱いの温情判決が下されました。あくまでも良識的に、平和裏に、円滑にといったところでしょう。そのため、もし別の投票所で「小池ユリエ」票があった場合、それは有効票として扱われる可能性が高いですね。

確かに立会人は、候補者陣営の代理人ではあるのですが、それ以前に公益代表という立場でもあり、公平性を重視しなければなりません。立会人は、異議申し立てをすることもできるわけですが、他陣営の票を重箱の隅をつつくぐらいにいちゃもんをつけると、逆に自分の陣営の票も厳しく突っ込まれる可能性があります。いたずらに攻撃的にはなりづらいでしょう。ただ、接戦だったら、どうなるかは私も分かりません。

その他、興味深いと思ったことは以下のとおりです。

・苗字だけの場合、今回は普通の有効票として承認されました。同じ苗字の候補者が複数いた場合など、条件によってはこのようにならないこともあるので、次の選挙では名字だけ書いて投票というのはやめましょう。按分票といって、完全無効ではなくとも普通の一票にカウントされないことがあります。

・残念ながら愛が強すぎるが故に無効票となったものを見かけました。例えば「頑張って」と小さくコメントがあったり、「★」といったマークがついたり。候補者の名前以外のものが書かれていれば、候補者の名前が正確に書かれてあっても、ルール上無効票になります。名前以外を書いてはいけません。

・「さん」とか「様」などの敬称は、ルール上有効票となります。

・投票用紙に、立候補者の誰にも共感できなかったのか、今の政治に関して怒りのコメントをぶつけているのを数枚見ました。実際の確認作業はスピーディーに行う必要があり、「名前以外のことが書かれている」と一目で判断されたら、最後まで読まれない可能性すらあります。あの短い時間では、速読スキルでも無い限り長文を読むのは無理です。怒りを訴えたかったら、幾つかの考えを妥協してでも無理やり一番近い考え方の人に投票するか、念を込めて白票を投じるかにした方がいいのではないでしょうか?

・点字票は、一旦、カタカナの文字に起こし、それを立会人達が承認する形で扱われます。

【8】封印する

疑問票の扱いが確定され、一旦すべての票がトレイに運び込まれ、最終集計です。その集計結果に検印を押すと、今度はトレイの表を段ボールに詰め込みます。絵的に文字通り、投票の重みを感じる瞬間ですね。詰め込まれた段ボールをガムテープで止め、投票用紙と書かれた紙が、テープの上に張られます。そこに封印を押していく作業をしていくのです。複数の割印がされ、封をされた後は開けていません感を強調しています。これが終わると、解散となります。

まとめ

開票立会人として、ツッコミどころは時折ありましたが、総じていえば、開票の手際の良さにただただ驚かされました。何万という票を約1時間半で9割以上裁き、さらにその短い時間の中で、何度も確認作業をパスし、10人以上の人が印鑑を押すわけです。このオペレーション力は、間違いなく民主主義国家が培ってきたノウハウなのだと思います。