私がY嬢と知り合ったのは、フィリピンに留学しているときでした。当時、私が趣味として占いをやっていたのを聞きつけ、相談に来たのです。失礼ながら、日本人留学生であるY嬢を一目見た瞬間に思い浮かんだ言葉は、平塚らいてうの「元始、女性は実に太陽であつた。真正の人であつた。今、女性は月である。他に依つて生き、他の光によつて輝く、病人のやうな蒼白い顔の月である。」というフレーズ。そのぐらい蒼白い月のような顔でした。

全体的な運気の流れを見てほしいと言われたので、タロットカードを並べると、「剣の10(正位置)」というカードが出ていました。タロットの中でも一番の苦難を表すカードです。話を聞いてみてると、20代半ばにして彼女の職歴は、ほぼ皆無に等しい状態でした。またフィリピンの留学先の学校では、初級者レベルのコースを受講していたこともあり、彼女の英語は中学3年レベルにも達していなかったと推測されます。

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そんなY嬢が、何故わざわざフィリピン留学を決意したかと聞けば、日本にいる元彼からただ逃げたかったというもの。留学費用は、遺産を切り崩して何とか工面したようです。彼女は、20代半ばという若さだけを除けば、日本社会の中で追い詰められていました。

数週間後、またY嬢から占ってほしいと相談されます。内容は恋愛の相談なのですが、相手は学校の生徒ではなく、なんと現地の方、つまりフィリピン人です。カードを並べてみると、剣の10は出なかったものの、結婚に至るような結果は出ませんでした。後から聞いた噂では、Y嬢はその晩泣き明かしたとのことです。逆にそれが彼女の火をつけてしまったのでしょうか?彼女は、ますますフィリピン人青年にぞっこんになっていきました。

そしてまたあるとき、Y嬢から相談を受けます。その内容は「フィリピンで就職したい!」というもの。男の為という理由は明らかでした。国籍目的の結婚詐欺というリスクもあるため動機がそれで大丈夫かというのもあるし、彼女の英語レベルの低さもあって、常識的に考えると正気の沙汰ではない決断です。

でも、私はそれを後押ししました。タロットでも首都マニラで働けとは出ていましたし、何より彼女は、このまま中途半端な英語レベルで帰国しても日本ではまともな職にはありつけなかったでしょう。帰国よりも成功の可能性のある海外で働いた方がスキルアップに繋がりますし、また恋愛目的という理由の為、英語の上達も今後十分にありうるという計算もありました。

そして、彼女は見事にマニラ市マカティ地区の会社から内定をもらいました。


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その後、彼女は1年強、フィリピンで働きました。彼氏はマニラ市から離れたところに住んでいたため、週末通い妻のようなストイックな生活を続けていましたが、それでも幸せだったと語っています。

先日、Y嬢が本帰国をしたと聞いて、会いに行きました。Y嬢曰く、本帰国というより長い一時帰国になるかもしれないとのこと。日本での就職先も、海外での就業経験が評価されて、あっさりみつかりました。日本で効率的にお金とスキルを貯めてまたフィリピンの彼氏の下に戻るつもりでいるそうです。いずれは、日本とフィリピン双方を巻き込んだ事業も手掛けたいと意気込んでおり、留学初期の蒼白い顔とは比べ物にならないぐらいいい顔になっていました。

最終的にそのフィリピン人彼氏と結婚しない可能性もありますし、フィリピンとは関係の無い世界でまた活躍していく可能性もあります。それでも、これまでは踏み入れられなかったお金もスキルも貯められる方向の道に歩み出しており、今この瞬間はY嬢にとって太陽の日々なのです。


(※依頼者の秘密は厳守しますが、今回は記事執筆の許可をいただきました)