フィリピンというのは、実に恵まれた国です。英語話者数ですと、世界の中でも上位に食い込みます。アジアでは、インドに次ぐ英語大国。そして、形式上英語が国際語となっている現在、これは大きなアドバンテージになります。外資が参入しやすく、また多くのNPOも活動しやすいからです。

授業風景


しかし、フィリピンは今なお、国民皆貧乏な状況です。この原因は何なのでしょうか?


答えを一言で述べるならば、「人材の流出」です。 

これを説明するにはまず、フィリピンの家庭事情を知る必要があります。フィリピンの一般家庭は、基本的に女性が稼ぎ手であるケースが多いです。そのため、子どもの中でも特に長女に教育費を一点投資することが珍しくありません。それによって、他の兄弟が教育を満足に受けられなくなる場合もあります。

ところで、フィリピンには「ウータン・ナ・ローブ(恩)」という価値観があります。親族から受けた恩を大事にするというものです。長女は、貧しい家庭から何とか教育費を捻出してくれた親に恩を感じ、それに何とかそれに応えようとします。そのために、国内よりかは手っ取り早く稼げる海外に進出するのです。英語は話せるので、国外で働く心的ハードルは、日本人が海外進出するよりも低いでしょう。国外での彼女たちは、あの手この手で海外で稼ぎ、実家に仕送ります。

このように高い教育を受けた優秀なフィリピン人女性の多くは、国外に飛び出そうとします。すると、国内に残るのは教育をあまり受けてこなかった人たちです。この人たちで、イノベーションを起こせるでしょうか?それが、今なお先進国入りできないフィリピンの現状なのです。


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さて、最近日本では「出国税」というものが検討されています。これは金融資産1億円を超える富裕層が、海外に逃げるのを阻止するための措置です。彼らは発展途上国で暮らすことで生活コストを下げたり、海外逃亡によって税金対策をしたりするのです。

税金を増やすというのは、あまり嬉しいことではありませんが、対富裕層向けの出国税は、国益に叶っています。富裕層になれるというのは、ある程度優秀な人材です。出国税はそういった人材の、安易な海外流出を防ぐことに繋がります。もし、海外流出に歯止めを掛けられなかったら、トビタテない人たちだけで日本を構成することになり、フィリピンのような教育投資対効果の社会が生まれてしまいます。


少し実感が湧かないでしょうか?もっと言い方を変えれば、これは日本の地方の衰退と似たような話です。日本の地方衰退の一因は、より良い大学、より良い就職先を求めて若者が都市部に向かう「人材の流出」だと言えます。人材の海外流出を防がなければ、衰退を続ける地方の状況が、日本全体に拡大を続けることでしょう。


もちろん、海外で学ぶこと、稼いでみることは、とても大きな経験になります。ただ、1億円を所持するほど程の経験を詰んだ後には、日本で活躍してもらわないと、日本の国益にはならないのです。個人の幸福を追求するか、国益を重視するか、出国税の是非はそこにあります。


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